UIJターン者成功事例

UIJターン就職希望者にさまざまな情報を提供し、広く人材を求める

新聞の発行部数が年々減少していることもあり、採用も苦戦を強いられる新聞業界。優秀な人材を確保するには、さまざまな工夫が必要になっています。
そんな中、栃木県の下野新聞社は県内だけの採用にこだわらない採用を展開し、採用の応募のうち3割ほどが県外出身者からの応募です。下野新聞社の採用の取り組みについて、経営管理局長の鈴木和芳さんにお話を伺いました。

プロフィール

栃木県

株式会社下野新聞社
鈴木和芳(すずき かずよし)経営管理局長

大学卒業後、新卒で下野新聞社に入社。広告営業として4年間働いた後、1991年に人事部に異動。2013年からは人事部長として、採用や労務管理全般を担当する。その後編集局総務部長を経て、2017年からは人事・総務・経理を統括する経営管理局長に就任。管理部門全体を統括しながら、採用責任者としての業務も行っている。

現在の採用状況

弊社は地方紙を扱う新聞社ですので、元々は栃木県内の方の就職が非常に多い会社でした。ところが、ここ最近では県外出身で弊社の採用に応募する方が増えてきています。数字で見ても、直近10年間で正社員採用した方が98人いて、うち24人の県外出身者採用しています。応募の段階でも県外出身者が約3割を占めているので、県外出身者を優先的に採用しているわけではなく、応募段階から一定数の県外出身者に応募いただいています。

 

県外出身者の内訳を見ると、埼玉県・千葉県・群馬県・福島県が多く、近隣県の割合が高いです。県内出身者も多くは東京をはじめとする首都圏からのUターン就職です。
そのような背景もあり、弊社の最初の選考である採用試験は、本社のある宇都宮の他に東京にも会場を用意し、2カ所で行っています。これは、進学を機に首都圏に行った方がUターン就職しやすいように、という期待があります。現在は新型コロナの影響で採用試験および1次面接をWebに置き換えていますので、さらに県外の方の負担感は減っているかと思います。

 

Uターンで入社される方ほど多くはありませんが、近隣県からIターンで応募される方もいます。近隣県から宇都宮大学などの栃木の大学に進学し、栃木県内で就職活動というパターンもありますし、近隣県に住む方が就職活動をする際に、栃木の企業を選択肢に入れていることもよくあります。関西圏からのIターンもありますが、ほとんどは近隣県からの就職ですね。

 

採用活動の中で工夫していること

弊社での採用広報の取り組みとしては、ニュース配信等を行う『SOON』というホームページの中に、採用案内のページを持っており、そこで採用に関する情報発信を行っています。UターンおよびIターンのページも設けており、先輩社員のインタビューが読めるようになっています。
Uターンの方に応募いただきたいのはもちろんIターンの方も、地域にこだわらず新聞の事業をやりたいという強い気持ちがある方には、ぜひ当社で頑張ってほしいと思っています。

 

就職活動で新聞社を希望する方、特に記者志望の方は、全国いろいろな新聞社を受けている場合がほとんどです。地方紙は47都道府県それぞれにありますので、新聞社への就職を考えている方が検索する中で弊社のWebページを見つけたり、弊社が参加している就職サイト経由で、弊社を見つけたりしているのだと思います。
弊社に応募される方は、とにかく新聞記者になりたい、必ずしも栃木県である必要はない、という方が少なくありません。ですので、採用選考を行う私たちとしても、応募される方の「記者になりたい」という思いや、営業部門志望の方でしたら「広告営業としてこんなことをやってみたい」という気持ちを面接の中でくみ取るようにしています。

 

また、弊社では『しもつけ就活NAVI』という栃木県での就職のための就職情報サイトを運営しています。このサイトは、県内の企業さんに参加いただいて、栃木での就職を考えている方が県内のさまざまな企業の採用情報を入手できるようになっています。他にも、コロナ前は合同企業説明会などのイベントも開催していました。この取り組みは一度栃木を出た方向けのUターン採用を意識しているのですが、弊社だけではなく栃木県全体で、地元に戻ってくる人を増やしていこうと盛り上げています。

 

入社後のサポートについては、家賃や引っ越しにかかる費用の一部をサポートしています。
特に編集記者になった場合は、栃木の各地域の総支局勤務からスタートすることが多いためです。配属の前に総支局長と面談を行い、仕事以外にもどういうところに住むといいのか、といった話をするようにしています。その上で、新入社員が住むことになった部屋は会社で借り上げ、県外出身者は引越し費用も会社で負担しますので、費用面での負担なく新生活をスタートできるようにしています。

今後のアプローチ

地方紙は昔と比べると応募数が減ってきており、各社苦戦しているのではないかと思っています。弊社としても、Uターンはもちろん、IターンJターンの方に向けてもさまざまな媒体に参加しながら採用に取り組んでいきたいと考えています。
採用というのは、人事部だけが学生と会っていればいいものではありません。応募者の方に弊社を十分に理解していただくために、人事部以外の社員にも採用のサポーターとして入ってもらうようにしています。会社説明会でのコミュニケーションや、入社前の内定者とのやりとりなどに入ってもらい、現場と人事で密に情報交換をしながら採用活動を進めていけたらと思っています。

 

地方紙で活躍したいと思っている方にとって、栃木県は首都圏から近くて交通の便もいいですし、生活環境も整っているので、生活も取材もしやすい場所だと思っています。
また下野新聞は、発行部数が結構多く、栃木県内では新聞をとっている方の半分以上が下野新聞を選んでいるんです。それだけの発行部数があると、自分の書いた記事で社会や行政が変わったり、人と人との結びつきが生まれたり、手応えのようなものを感じやすいと思います。そのような魅力を丁寧に伝えていき、下野新聞に興味を持ってもらえたらと思っています。

 

まとめ

下野新聞社に限らず、地方企業の採用は大きく2つの軸に分けられます。一つは県内の方の採用、もう一つは県外の方の採用です。後者における取り組みとして下野新聞社は、①広報段階におけるUIターンの先輩社員の発信、②採用段階における採用プロセスの東京開催・オンライン化、③内定後および入社段階における経済的なサポート、④採用全体における現場社員との連携を行っており、王道とも言える取り組みを丁寧に遂行している印象を受けました。
また新聞社のネットワークを生かして県内企業と連携し、1社だけでは集めることが難しい人数規模での母集団形成にも成功しているように見受けられます。

 

要点を押さえた基本的な施策と、自社の独自性を生かした施策とを組み合わせ、UターンおよびIJターン採用の訴求を行う考え方は、地方に拠点を置く企業の参考になるのではないでしょうか。

法人プロフィール

法人名:

株式会社下野新聞社

事業内容:

「下野新聞」発行、各種事業の主催後援、イベントの企画運営、「SOON」や「下野新聞電子版」などデジタル関連業務ほか

設立:

1878年6月1日

従業員数:

311人 (2021年8月末時点)

ホームページ: