UIJターン者成功事例

社員が安心して働ける環境を整え、自治体・異業種とも連携して採用活動を展開。

IT業界における人材不足が叫ばれる状況下、地方都市に拠点を置くIT企業がどのような採用戦略をとっているかは大いに気になるところです。そんな中、新潟県新潟市で事業を展開する株式会社シアンスは、多様なチャンネルを通じて人材を採用し、多様な働き方を実現することで従業員の定着を図っています。人事課グループリーダーの遠藤香那子さんに、UIJターン採用で成果を上げるための取り組みについて、話を伺いました。

プロフィール

新潟県

株式会社シアンス
管理部人事課グループリーダー
遠藤香那子(えんどう かなこ)氏 

2011年入社。新潟市出身。長野県の大学に進学し、業種にこだわらず地元で働きたいと考え、Uターン就職で株式会社シアンスに新卒入社する。入社当時は社員数50人ほどで、事務職は遠藤さんも含め3人だけだったので、社長の直下で人事部門を中心に幅広い経験を積み、採用活動も入社1年目から担当している。趣味は海外旅行。有給休暇が取得しやすい環境を生かして台湾、韓国、タイ、ポルトガル、と年々行動範囲を広げている。

現在の採用状況

私たちのようなIT企業は、形のあるモノやサービスを販売するビジネスではありません。お客様の経営上の課題や要望をお聞きした上で、そのお客様に最適なITサービスを提供していくという業態です。従って当社にとっての財産は製品ではなくてITサービスを生み出す社員、すなわち「人」ということになります。それだけに人材採用は、経営がトップダウンで力を入れる取り組みになっています。社員が、多様な働き方を通して安心して活躍し続けることができる職場環境を提供したいと経営トップは常々話しています。

 

今年で創業33年目になる当社ですが、20年前くらいから新卒を積極的に採用しており、当初からUIJターンの方を採用してきました。常時、一定数を占めていて、会社全体でいうと、だいたい3割強がUIJターンで入社した人です。例えばUターンの方は首都圏からが多く、Jターンだと山形や福島出身の方が新潟県内の大学に進学し、そのままこちらに就職するというケースですね。

 

当社の場合、通常の採用活動とUIJターンの採用活動とを区別せず、基本的には同じ姿勢で臨んでいます。せっかく採用した方が、結婚や子育て、将来的に介護などの問題が出てきたときに辞めずに済む職場環境づくりに力を入れていますので、採用活動では、当社のそういう長期にわたって安心して働き続けられるという点を、求職者の皆さんにアピールしています。

 

実際、当社では有給休暇がすごく取りやすくて、取得率も8割までになっています。育休や時短勤務も制度があるだけではなく、本当に取りやすい雰囲気なので、女性社員はもちろん、育休を取る男性社員も多くいます。また、新潟は人も温かいし、ある程度都会の雰囲気もありながら自然の豊かさも感じられる町です。「そんな新潟で生活して働いてみませんか」と皆さんにお話ししています。

採用活動の中で工夫していること

まずコロナ禍になってからはオンラインでの会社説明会と一次面接を導入しています。これまでUターン就職を考えている首都圏の学生さんはおられましたが、オンライン面接を始めてからは当社に全く目を向けてもらえなかった関西や九州の学生さんが会社説明会に参加したり、実際に応募したりという効果もありました。ただ、オンラインではどうしても伝わらない部分がお互いにあるので、二次選考以降は必ず来社していただいています。加えて、採用ミスマッチ防止対策として、最終選考で必ず職場体験を行います。3~4日間程度、実際に職場に入ってもらって仕事の疑似体験をしていただいています。

 

UIJターンについていえば、特別大がかりなことをしているわけではありませんが、いくつか工夫があります。一つは自治体が提供している支援制度の活用です。新潟県は、UIJターンの就職活動にかかる交通費や宿泊費の一部を補助する制度を設けています。それを当社から県外在住の学生さんにアナウンスして会社訪問を促しています。「新潟県の補助を活用してぜひ来社してくださいね」と声掛けすることで、新潟にある当社への就職を検討してもらうきっかけづくりにしています。

 

もう一つは、採用広報活動を通年実施していることです。県外の学生さんに対しても夏休みや冬休みの期間など帰省されるタイミングで会社説明会を開催しています。「帰省のついでに来てくださいね」という言葉を添えて、少しでも参加しやすいよう工夫しています。

あとはオフィス環境もPRさせてもらっています。10階から展望できる信濃川や万代橋の景色はとてもいいのですが、同じ空間に社長と社員がいるという仕事風景から職場のフラットな雰囲気も感じとっていただけたらと思っています。

地方ならではの取り組み

新潟県でもIT人材が採りにくいという状況に変わりはありません。そこで自社だけで採用活動を完結させるのではなく、同じ新潟県下の団体や他企業と連携しての取り組みに力を入れています。

 

一つは、新潟県社会人スポーツ推進協議会が主催する「にいがたアスリートキャリアフォーラム」への参加です。新潟県で就職を希望するアスリートと県内企業との交流を図るイベントで、当社にとっては、スポーツに打ち込んだ経験があり、かつ新潟で働きたいという人材に出会えるチャンスとなります。おかげさまで、これまで2名のアスリートがこのイベント経由で入社しており、手ごたえを感じています。

 

もう一つ、地方ならではという意味で、異業種企業がタッグを組む合同インターンシップが挙げられます。IT企業である当社、それから商社とセキュリティ会社の3社が合同で毎年夏に開催しています。地元で働きたいけれどまだ業界を絞り切れていないという学生さんには最適の催しといえます。ワンデー・インターンシップということで、参加者は3社を1日ずつ体験して、最後にまとめのワークをするという全4日間のプログラムです。従来はIT業界を志望している学生さんとしか接点がなかったのですが、そうでない入り口から当社を知ってもらうことができます。実績としては3社とも採用ができていますし、Uターン入社の方もおられます。現在はコロナ禍で中断していますが、これからも3社で継続していく予定です。

 

LO活からのお知らせ
自社の課題にあった取組みを行うことで採用に成功した事例を、厚生労働省サイトの「地域で活躍する中小企業の採用と定着 成功事例集」にて紹介しています。成功事例として、株式会社シアンス様が紹介されているので、ぜひこちらからご覧ください。

 

まとめ

株式会社シアンスはUIJターン採用だけに特別力を入れているわけではありません。全ての社員が多様な働き方を通じて、できるだけ長く働き続けることができる職場環境を整えていくこと。そして、そのことをシンプルに訴えていくことです。結果として、社員の3割強がUIJターン入社ということで、なにごとも基本が大切という事実を改めて示しています。

また地元の団体や他企業と連携しての取り組み、自治体の支援制度の活用促進も功を奏しています。求職者との接点を増やすイベントにも積極的に参加し、応募につながる公的支援策を求職者にアナウンスするなど、採用機会を広げつつ応募のハードルを下げていく地道な取り組みがじんわりと効いているのでは、という印象を受けました。

法人プロフィール

法人名:

株式会社シアンス

事業内容:

システム開発・ITソリューション・Webマーケティング

設立年月日:

1989年(平成元年)7月5日

従業員数:

63名(男性44名、女性19名)

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