地方中堅・中小企業の
採用実態を知る

データから読み解く 
地方企業の採用実態と課題

各所で発表されているデータから地方企業の採用実態をお伝えします。これからの地方企業の採用、市場はどうなっていくのか、そして、地方企業が取り組むべき課題とは?
本記事では新卒採用市場を中心に見て行きますが、中途採用市場に置き換えてもらっても十分に役立つ内容になっています。

新卒市場はコロナの影響をうけてどう変わったのか

リクルートワークス研究所が発表する大卒求人倍率調査によると、求人倍率の推移は以下のようになっています。昨年まで高い倍率で推移していましたが、新型コロナウイルス(以下、コロナ)感染拡大により落ち込みが見られ、全国の民間企業の求人総数は、前年の80.5万人から68.3万人へと12.2万人減少。最新(2020年6月調査)では1.53倍の求人倍率となっています。次年度以降この数値はさらに下がる可能性もありますが、今のところバブル崩壊後の経済停滞期やリーマン・ショック時のような低水準ではないようです。

出典:リクルートワークス研究所「第37回 ワークス大卒求人倍率調査(2021年卒)」
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従業員規模別の求人倍率を見ると、規模の違いで大きな変動があったことが分かります。特に従業員数300人未満の求人倍率は昨年度8.62倍から3.4倍へと大きく落ち込んでいます。地方企業には同規模の会社が多いことを考えると、コロナの感染拡大で求人を見合わせた企業も多かったのではないでしょうか。とはいっても、依然求人倍率は全体平均と比べると厳しいことには変わりなく、採用の難易度は高いと言えるでしょう。

コロナ不況がもたらす採用への影響

コロナ自粛により日本の経済は大きく冷え込んでいます。人々の消費行動にも変化を及ぼしています。このような先行きの不透明な中、採用・就職の両面で考えると、企業・学生ともに「手堅い選択」をしがちになります。つまり、企業は「間違いのない学生」を厳選して採りたいと考えるようになり、学生は「間違いのない企業」を厳選して入社を決める傾向が強くなります。これは学生にとっては「知っている会社・一般的にいいと言われている会社」を選びがちになるということです。知名度のない会社、BtoBのビジネスをしている会社は厳しい状況になると考えた方がいいでしょう。

地元就職希望者はどれほどいるのか

次に地元就職を希望する学生はどれほどいるのかを見てみましょう。こちらは株式会社マイナビが発表した、2021年3月卒業予定の全国の大学生、大学院生(7,263名)を対象に、「マイナビ 2021年卒大学生Uターン・地元就職に関する調査」の結果を参考にします。

出典:株式会社マイナビ「2021年卒 マイナビ大学生Uターン・地元就職に関する調査」
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卒業した高校の所在地と最も働きたい都道府県の一致率を、「全体平均」「地元の大学に進学した場合」「地元以外の大学に進学した場合」の3つのパターンで表しています。全体平均としては地元就職希望者の割合は48.7%。およそ半分が地元就職を希望していますが、地元以外の就職先を希望する傾向は年々強まっており、10年前の12年卒と比較して14.6ptの減少となっています。

一方、働く場所が自由になった際の理想の居住地・勤務地についての問いとなると、興味深い回答が返ってきています。回答者の2人に1人が勤務地・居住地ともに「地方」を選択しています。学生も「何が何でも東京で就職したい」わけではないのですが、地方に対しての不安やネックとなるものがあるようです。もう少しこの辺りを考えていきましょう。

出典:株式会社マイナビ「2021年卒 マイナビ大学生Uターン・地元就職に関する調査」
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地方就職に不安になっていることは何か

2014年に内閣官房が出している「東京在住者の今後の移住に関する意識調査」を参考に考えてみましょう。このデータには社会人からの回答も含まれているため、学生のそのままの意見というわけではありませんが、どんな点を不安に感じているかについての参考になると思います。

一番は「働き口が見つからない」。これは地方に自分の希望する就職先はなさそうだと感じていると言えそうです。また、2番目と3番目の「日常生活の利便性」や「公共交通の利便性」については、地方に住むと東京より不便なことが多そうだと感じていると言えるでしょう。こうした生活・暮らしに関する不安を払拭するため、採用時にコミュニケーションをとっておくことが大切だと分かります。

また、地方の企業の採用情報が求職者にきちんと届いてないことも、こちらのデータから読み解くことができます。

いかに自分たちの存在を知ってもらうか、気付いてもらうかは、採用活動をスタートする際にまず解消しなければいけない課題であることが分かります。

インターンシップの活用について

採用活動において多くの企業が取り入れているインターンシップを、業界や企業を知る機会として活用してみるのはどうでしょうか。転職情報会社の学情が2022年卒学生向けに調査した「地方でのインターンシップ」に関するアンケートにはこのようなデータがありました。

このアンケートでは、4人に3人が地方で開催されるインターンシップに関心を示しているようです。では、どのようなインターンシップを体験したいと思っているのでしょうか。引き続きデータを見ていきます。

興味のあるコンテンツが提供できるかは大切なところですが、見逃せないのが「オンラインで参加できる」が2位に挙がっている点です。就活生の悩みの一つとして「交通費」等の費用がかかることがあります。オンラインの活用は、地方企業にとっては積極的に取り入れたい手段の一つです。「地元企業がWEBセミナーを実施していると志望度が上がる」と回答する学生が増えているとも言われていますが、一方で首都圏企業に比べて活用率がまだまだ低いというデータもあります。ぜひ新たな採用手段としてチャレンジしてみてください。

出典:株式会社学情「2022年卒学生の就職意識調査(地方インターンシップについて) 2020年6月版」
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選考を通じてコミュニケーションが取れているか

採用活動の基本は、企業と学生のコミュニケーションです。この量と質こそが勝敗を分けます。では、皆さんの採用活動ではどれぐらい1人の学生と向き合ってコミュニケーションを取っていますか?

リクルートキャリアの就職みらい研究所が発表した「就職白書2020」で発表されたデータを参考に見ていきましょう。まず、具体的に学生一人あたり何分の時間を使っているかについては、平均で62分間でした。皆さんの会社の採用活動と比較してどうでしょうか。

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そして、コミュニケーションの質に関しては、以下のデータが参考になります。

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注意して見てほしいのが「学生が知りたいと思っていること」がどんな点であるかということです。それぞれの項目に対して、皆さんの会社では選考を通じてコミュニケーションが取れているでしょうか。上記の「量」と「質」で競合企業に差を付けられない、むしろ圧倒的に凌駕することを意識して採用活動を見直してみてください。

コロナによって変化する市場をチャンスにできるか

本記事では、各所で発表されているデータから地方企業の採用実態をお伝えしました。コロナによって大きく変化している市場を見ると、これらをチャンスとして勝機を見いだす地方企業も出てくると思います。自社はまず何に取り組むべきか、こうしたデータから考察し、課題に取り組んでみてください。