群馬県で、北関東最大級の施工実績を誇るダクト工事をはじめとする空調設備業を行っている三朋企業株式会社は、映画の予告編のような採用動画を通じて、幅広いエリアから企業理解を深めた人材の採用に成功しています。採用動画を制作するきっかけとなった出来事や、その効果などについてお話を伺いました。
UIJターン者成功事例
採用動画は企業理解を向上させ、採用エリアを拡大させる
プロフィール
三朋企業株式会社
安田 孝廣(やすだ たかひろ)採用担当(写真左)
神奈川の大学を卒業後、新卒で住宅メーカーへ営業として入社。その後、デザインの仕事に携わりたいと思い、地元の群馬にUターン。独学やスクールでデザインスキルを学び、広告代理店・印刷会社を経て、2018年9月にデザイナーとして三朋企業に入社。翌年からデザイナーと採用業務を兼任。2021年から新卒・中途問わず採用業務をメインで担当しながらもデザイナーとしての業務も行っている。
谷口 修(たにぐち しゅう)昨年入社のIターン転職者(写真右)
神奈川の大学を卒業後、新卒でゼネコンに入社。沖ノ鳥島港湾や豊洲新市場等の現場監督を担当。その後、学生時代に青果のアルバイトをしていた経験から、東京の果物店に入社。店舗業務をはじめ、新メニューの開発・SNS管理等に主任として従事。2022年、妻の実家へIターンすることから、同じく青果店への転職を検討する中で三朋企業が運営する宮石青果店のホームページやSNSを見て入社。現在は仕入れ責任者として主に市場の仕入れ・店舗販売の値決めを行っている。
現在の採用状況
安田:当社は、群馬県でダクト工事をはじめとする空調設備業を行っています。ダクトにおいては自社工場で製造を行い、工事まで一貫して仕事を行っています。エアコン工事においては業務用・家庭用問わずエアコンの設置を行い、それに付随する必要な板金や電気工事の業務を併せて仕事を行うケースが多いです。
また、経営者が同じであったことから、3年ほど前に宮石青果店(みやいしせいかてん)という店舗を吸収合併しました。宮石青果店では野菜や果物だけでなく、オリジナル商品の「新しょうが漬」「フルーツサンド」「スムージー」などを販売しています。本日取材に同席している谷口が、宮石青果店での昨年のIターン転職採用者となります。
当社の採用活動は、就職ナビサイトへの掲載や、合同企業説明会への出展など、基本的な取り組みを実施しています。ただ業界内には、いわゆる3K(きつい・きたない・きけん)のイメージがあるため、「いかにして興味を持ってもらうか」を重視した採用ツールの制作を心掛けています。
ここ最近で最も力を入れたのが、「採用動画」です。
ある年、大学生だけでなく、高校生や専門学校生も含めた新卒採用者が「ゼロ」となってしまったことがありました。その際の危機感から、中途半端な施策ではなく、しっかりと当社の魅力を伝えられる採用ツールが必要だと考えたのです。
もともと「ダクト」というもの自体がイメージしにくいことから、「ダクト」がどのように世の中に役に立っているのか、また働く人たちはどのような印象の人たちなのかを表現することを目指して、社長や部長と一緒に「地球の危機を当社が救う」という映画・アルマゲドンのような壮大なミニムービーのコンセプトを考えました。そして制作は、動画制作会社に依頼しました。
採用活動の中で工夫していること
企画した採用動画は、世界各地で発生した異常な大寒波が人類滅亡の危機をもたらす中で、当社のダクト技術が地球を救うというストーリーです。7分ほどの動画ですが、TVレポーターや大臣などの配役もあり、映画を意識して制作しました。撮影時期がコロナ禍だったため、今振り返るとよくここまでの撮影ができたと感慨深く思います。
実際に採用で使ってみると、効果は想定以上のものでした。
これまでは地元から10km圏内程度のエリアからしか採用できていなかったのですが、動画を制作することで埼玉県や東京都、長野県などからもエントリーが来るようになりました。さらに、面接時の企業理解度が上がっているという効果も得られました。新しい採用動画を公開してから、自社サイトの閲覧数も4~5倍に急増していて、たくさんの人が当社について調べてくれていることが分かります。
面接前の企業説明会では、必ずこの採用動画を見たかを質問をするのですが、これまで採用動画を見て面接に進んだ方は、ほぼ採用につながっています。一方、動画を見ずに面接に進んだ方は、なかなか採用につながっていないというのが現状です。
谷口:私は、宮石青果店のSNSをきっかけに入社したため、転職活動時に採用動画は見ていません。ただ、このような動画を見ていたら、実際にどんな人たちが働いているのか、現場の写真や社員インタビューを確認していたと思います。
また私自身が転職した時はSNSが接点になったので、SNSで現場の日常を投稿することも、採用につながると思っています。私のIターン転職時には、転職サイトなども活用したのですが、特に現地に行き実店舗をめぐる活動に力を入れていました。青果店の仕入れ担当としてIターン転職するには、現地のことを知っていなければ、転職後のコミュニケーションで困るのではないかという不安があったからです。現地訪問で見かけた青果店や企業のSNS情報を調べて、実際の仕事をイメージしながら転職活動を行いました。
今後のアプローチ
安田:新たに撮影した「採用動画」は、これまでにない方々との接点を生み出しました。一方、地元高校生の採用を考えると、また視点が変わってきます。「チラシ」が重要なのです。
高校生の新卒採用では、各校の担当の先生にアポイントを取って会いに行き当社の説明をするのですが、ここで「いかに良い印象を残せるか」が重要だと考えています。そのため、まずチラシのデザインに力を入れますし、「採用動画」を担当の先生に見てもらう努力もしています。この業界は3Kイメージが強いものの、当社の現場は若い世代がしっかりと自分の意見を伝えられる自由度の高い環境となっています。そのような社風も伝えられれば、高校生にも興味を持ってもらえるのではないかと考えています。
採用担当の私自身が採用ツールをデザインしていることも、当社の採用では強みになっている気がします。実際に採用現場にいることで、欲しい人物像や、欲しい人物がどのようなことを気にしているかなどのイメージが具体的になるので、そのターゲットに届くデザインができると思っています。
今後は、動画の続編も検討しながら、TikTok(ティックトック)やInstagram(インスタグラム)といった若者が利用するSNSも活用して、採用の幅をさらに広げていきたいと考えています。実際にIターン転職してきた谷口が、SNSをきっかけに転職していることからも、SNS運用の重要性を感じています。
まとめ
三朋企業株式会社では、デザイナーが採用業務を兼務していることがプラスの効果を生んでいるように感じました。デザイナーが担当することで、採用ツールのデザインや掲載内容もターゲットの求めるものになりますし、デザイナーと兼務する人事担当者は意外性があり、応募者の興味や関心をひきやすいでしょう。クリエイティブ思考のある方を採用担当にしてみることも、採用手法の転換に効果を生むかもしれません。
法人プロフィール
法人名:
三朋企業株式会社
事業内容:
空調設備業、ダクト工事、冷媒工事(エアコン)、板金製作、電気工事、産業廃棄物収集運搬
設立年月日:
1973年4月19日
従業員数:
125名(令和5年4月1日現在(パート含む))
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