UIJターン者成功事例

認知を高め、求職者と接触できる面を広げたことで、採用が好転

山形県を中心に、東北エリアで住宅建築事業を行っている株式会社ホリエ。同社は建築設計デザインコンクールの開催や、レストラン・ホテル事業などへの展開を通じて若者との接点を増やし、県内外からの採用に成功しています。認知拡大を採用へつなげたノウハウを、代表取締役の堀江さんに伺いました。

プロフィール

山形県

株式会社ホリエ
堀江 龍弘(ほりえ りゅうこう)代表取締役

新潟大学工学部建設学科卒業後、大手ハウスメーカーに入社。営業職に従事した後、2010年、家業である同社に入社。シエルホームデザイン(住宅建築事業)、家具事業、ホテル事業、レストラン事業、不動産事業を立ち上げ、2.5億円の売上を19億円(2022年度)に成長させた。一級建築士、MBA(経営学修士)取得。

現在の採用状況

当社は、山形県を中心とした東北エリアで、住宅建築事業を営んでいます。東北エリアは雪深く冬の寒さが厳しいため、高気密・高断熱にこだわっており、その機能性は建築業界でも高い評価をいただいています。ただ住宅は、機能性だけを重視しても、お客様が納得できる家にはなりません。当社では、建築・デザインはもちろん、家具やインテリアにまでこだわって、お客様にご納得いただける住環境すべてを提供する取り組みを行っています。

現在の採用手法は、新卒の就職ナビサイトをはじめ、合同企業説明会や転職エージェントなど、一般的な採用手法をほぼ用いており、毎年山形県以外からも多くのご応募をいただいています。ただ、当然のことながら最初は苦戦しました。合同企業説明会で東京の新宿会場まで行ったにもかかわらず、話を聞いてもらえたのは地元出身の数名だけといったような経験もしました。そこで感じたのは「普通のことをやっていたのでは、大手には勝てない」ということでした。

そこで、どうすればいいかと考え着手したのが、「建築設計デザインコンクール」の開催でした。着想を得たのは、大学の研究室に貼ってあったポスターです。「学生さんが参加してくれるコンクールを実施したら、ポスターを学内に掲示させてもらえるのではないか」「その結果、弊社の名前も知ってもらえるのではないか」と考え、すぐにポスターを作り、新入社員と一緒に大学を訪問しました。思惑通りポスターを貼らせてもらうことができ、「建築設計デザインコンクール」はスタートしました。

 

この段階での目的は、採用ではありません。まずは株式会社ホリエを知ってもらうことでした。ただ、認知が高まれば、自ずと接点は作りやすくなります。当社は、じっくりと話を聞いてもらえれば、興味を持ってもらえる会社である自信はあったのですが、なかなか最初の接点が作れないために、採用につなげられないという課題がありました。コンクールの開催は、接点づくりの難しさという課題を解決してくれました。

実際にコンクールに参加してくれた学生さんだけでなく、周囲の学生さんにも口コミで伝わり、さらにその後輩となる下の世代にまで認知が広がりました。結果的に就職ナビサイトでも、コンクールがきっかけで県外からのエントリーが増えました。

採用活動の中で工夫していること

もうひとつ、採用活動を続けてきて大きな変化を生んだのは、建築以外の事業を開始したことでした。レストラン事業やホテル事業をスタートすると、明らかに応募者数も、応募者の意識も変わってきました。積極的に当社に興味を持ち、応募してくださる人が増えたのです。

楽天トラベルアワードを受賞した「HOTEL SLOW VILLAGE」

新規事業を始めたきっかけを少しお話しします。当社の住宅建築は、「素敵な生活の場」を提供することを重視しています。その延長で「自分たちが暮らすこの地域にも、素敵な場を提供したい」と考えるようになりました。本社がある山形県西置賜郡飯豊町(にしおきたまぐんいいでまち)は、県の中心部から離れた人口約7千人の小さな町です。

そんな場所に自慢できる素敵なレストランやホテルがあったら、地元住民の誇りになると思ったのです。そんな思いで立ち上げたホテル「HOTEL SLOW VILLAGE」は、楽天トラベルアワードを受賞するまでに成長し、建築関係者以外への認知も拡大、採用もさらに好転しました。

また、私たちは、山形県南陽市のイオンタウンの中にフリーラウンジスペースをオープンし、家具やインテリア関連商品の販売をしているのですが、同じスペースに、小さなお子さんが絵本やおもちゃで遊べるキッズコーナーやボルダリングコーナーを設けたり、ビジネスマンにコワーキングスペースを提供したりしています。ここでも、若い世代との接点が、日々生まれています。

このラウンジの企画・運営を、入社一年目の新人社員に担当してもらっていることも、「若手のうちからチャンスをもらえる会社」だと捉えられ、採用に一役買っているように感じます。

ラウンジにとどまらず、何かプロジェクトを開始する際には、若手社員がリーダーとなり、アイデアを出し、周囲の人たちを巻き込みながら形にしていきます。そんな、若者が活き活きと仕事をしている雰囲気が、接点を持った学生や若者には魅力的に映るようで、採用の好循環を生んでいます。

ちなみに、ラウンジやホテルといったような施設をきっかけに当社を知ってくれた学生や若い世代は、ダイレクトリクルーティング(※)から採用につながることが多いです。求職者にアプローチする際に、当社運営施設の話を織り交ぜることで、当社への興味関心度を引き上げることができるため、認知拡大が質の高い採用活動を支えていることを実感します。

※ダイレクトリクルーティング:企業が直接求職者へアプローチをする採用手法のこと。
求人を出し応募を待つスタイルではなく、ダイレクトリクルーティングサービスの会員に対し企業が直接アプローチすることで、確実に接点が作れる特徴がある。代表的なサービス例は、ビズリーチやWantedlyなど。

 

今後のアプローチ

若手が活き活き活躍しているので、今は上の年代の活躍にも力を入れています。建築業は経験も重要です。若手に経験を継承するためにも、上の年代には活躍し続けてもらわなければなりません。

一例として「エイジレス採用」(年齢を問わない採用)を強化していくつもりです。

実際に60歳を超えた方の採用もできていますので、若手だけでなくベテラン社員も活き活きと活躍できる仕事環境をつくっていきたいと考えています。

また、私たちのような地方企業は、都市部での企業認知を上げる努力も必要だと考え、仙台オフィスを設けました。大都市に拠点があることで、その都市に住む方だけでなく、その都市から首都圏の大学に進まれた方とも接点を持ちやすくなります。仙台に拠点を持ったことも、採用面において好影響を与えてくれたと思います。

 

まとめ

株式会社ホリエの採用成功のポイントは、枠から飛び出るチャレンジであると感じました。合同企業説明会での認知度の低さを克服するために「建築設計デザインコンクール」を実施。また、レストラン・ホテル事業を展開することで、認知が拡大しました。さらに、応募者を待つスタイルの採用手法だけでなく、直接求職者へアプローチできるダイレクトリクルーティングを導入したからこそ、認知拡大効果を採用につなげられたと感じました。

地方企業が地元の魅力化に向けた事業を起こし、採用につなげていくというプロセスは、他の地方企業の皆さまにも、ヒントになるのではないでしょうか。

法人プロフィール

法人名:

株式会社ホリエ

事業内容:

建築事業、一級建築士事務所、不動産事業、インテリア事業、地域創生事業、 ホテル事業、バケーション事業

設立年月日:

昭和64年1月

従業員数:

69名(2023年4月現在)

ホームページ: