瀬戸内地方に、いくつものホテルを運営し、自然との共生をテーマにした土壌再生型農業などの事業も行っている広島県の株式会社サン・クレア。同社は企業理念の訴求を軸とした採用ツール「Wantedly(ウォンテッドリー)」の活用で、それまでの採用課題を克服しました。日本全国から事業に共感する若者を採用できるようになった秘訣を、CEOの細羽さんに伺いました。
UIJターン者成功事例
採用の情報発信を「企業理念の訴求」に切り替えて、状況が好転
プロフィール
株式会社サン・クレア
細羽 雅之(ほそば まさゆき)Founder & CEO 地域蘇生人(Social Re-generator)
大学卒業後、外資系企業でエンジニアとして働いた後、実家である岡山県に帰郷。50億円の負債をかかえた家業を再生させていく中で、独自のホテルマネジメントノウハウを構築。2015年、瀬戸内を中心にホテル事業を展開するサン・クレア創業。2020年、パンデミックを機に人口270人の愛媛県内の超限界集落に家族で移住した。
現在の採用状況
当社は、瀬戸内エリアを中心にホテル経営や地域ブランディングを行うとともに、自然との共生をテーマにした土壌再生型農業などの事業も展開しています。私たちのホテルは、単に寝泊まりするためだけのホテルとは少し違います。その土地に住む人がより豊かになれるような、独創的な「まち創り」の中にホテルの役割や価値を見出していこうと考えながら運営しています。採用に関しては、コロナ禍になる少し前あたりから採用手法を変更し、採用条件でなく企業理念でエントリーの動機付けができるWantedlyの活用を軸に置きました。
それまでは、一般的な採用セオリー通りに就職ナビサイトへの掲載や、合同企業説明会への参加が中心でした。ただ、これらの手法では、基本給や有給休暇日数などの「採用条件」に応募者の目が向きがちです。これでは当社が何を考え、どのようなホテル経営を目指しているのかを伝えることが難しく、多くの掲載企業の中で埋もれてしまっている感覚がありました。また応募してくる学生の情報も、表面的な部分しか見えてこないことに、課題を感じていました。
一方Wantedlyでは、基本給などのいわゆる「採用条件」を記載する箇所がありません。いきなり「私たちは何をやっているのか、なぜそれをやるのか」という企業理念から伝える構成になっています。そのような構成になっているからこそ、会社のとがっている部分をしっかり表現できるようになり、「私たちの会社が目指していることに共感した若者」が、日本全国からエントリーしてくれるようになりました。
応募者マイページには、興味のある分野や、これまでやってきた経験が記載されているため、その人がどのような志向性で、どんなことに取り組んできたのかも把握できるようになりました。その結果、会社の目指す方向性と応募者のやりたいことのマッチング精度も高まりました。
採用活動の中で工夫していること
Wantedly には、社内のメンバーが日頃から感じていることを記事にして掲載しています。「当社では〇〇ができます」というようなPR 的な書き方ではなく、「自分は〇〇でありたい」とか「業務の中から〇〇を得た」というような、リアルな「仕事に対する想い」が表現されています。
特に書き方を指示した訳ではないのですが、自然と社員がそのように書いてくれている状況で、その内容に共感する応募者もいます。執筆担当者をローテーションして義務的に書かせるようなこともしていませんが、このあたりは、Wantedly 担当者がうまく書き手を盛り上げて対応してくれています。
そんな発信が目に付くようになったのも、「企業理念に共感して入社してくれる人が増えてから」のように感じます。就職ナビサイトに掲載していた頃は、学生はまず「エリアと業種/職種で絞って検索」する手法で当社を見つけていたと思います。しかし今は、企業理念を軸にしているため、エリアも業種/職種も関係なく、まずは理念に共感してくれる人と接点が生まれ、採用につながっています。やりたいことの熱量が高い人を採用できているからこそ、自然と記事が生まれているように感じます。
Wantedly には、「学生インターン日記」という記事コーナーも設けています。
これはインターンに参加してくれた学生が、インターン活動の集大成として書く報告書です。みんな力を入れて書いてくれるので、せっかくだからWEB で公開しようという話になり、コーナーを設けました。
すると、執筆した学生の友達なども読んでくれるので、いろいろな方の目に留まるようになりました。さらにインターンシップや採用に応募しようと考えている人にも、学生視点のリアルが伝わります。その結果、面接の段階で、当社に対する理解度が高くなったと感じています。面接などで、「自分のやりたいこと」を一生懸命語ってくれる応募者も増えましたね。
「企業理念の訴求」から採用する手法に切り替えた効果は明確です。かつては、一人も採用できない年もありましたが、今では、会社が求める志向性の若者を、エリアを問わず安定して採用できています。ゆくゆくは、Wantedly から宿泊に結びつくようなケースも出てくると嬉しいですね。
サン・クレア社が運営するホテルなどの宿泊施設
今後のアプローチ
採用に関しては、現状大きな課題は感じていません。
日本全国から、私たちのやっている事業に共感する若者が応募してくれており、採用につながっているからです。入社後も、自分が興味のある仕事なので、自発的に行動してくれており、この採用手法に間違いはないと感じています。
ただ、さらに多くの若者にリーチする方法は、まだまだあると思っています。現状に満足せずに、新たなアプローチを開発していきたいですね。
例えば、動画やSNS を活用して、より具体的な事業のイメージを同じ志向性の若者に届けていきたいです。同じ志向性の人たちとつながれば、直接「採用」という形でなくても、何かしらビジネスにおいてお互いにプラスの働きをもたらすように思うので、「仲間づくり」という視点も持って、採用活動に取り組んでいきたいと考えています。
まとめ
株式会社サン・クレアでは、採用の軸を「企業理念の訴求」に切り替えたことで、様々なことが好転しました。真正面から、自分たちのやりたいことを熱量高く表現するからこそ、多くの共感する人たちを集められるのだと感じました。近年は、仕事に対して「やりがい」を最優先にする若者が増えています。「企業理念」をいかに伝えるかは、より広いエリアから共感する応募者を増やすために、重要なポイントになるのではないでしょうか。
法人プロフィール
法人名:
株式会社サン・クレア
事業内容:
宿泊業・地域再生事業・土壌再生型農業(Regenerative agriculture)・飲食業・小売業・野外教育事業・創業支援事業
設立年月日:
2015年10月1日
従業員数:
130人(2023年9月現在)
ホームページ: