地方中堅・中小企業の
採用実態を知る

データから読み解く
地方企業の採用実態と課題
~地方就職の意識はインターン
シップから生まれる~

近年の人材採用市場は人手不足が顕著で、求職者に有利な売り手市場と言われています。
コロナ禍で混乱した採用手法は、対面面接が再開し、オンラインと対面を使い分ける企業が増えました。UIJターン採用を行う地方企業にとって、オンライン面接が定着したことはプラス材料と考えられますが、実態はどのような状況になっているのでしょうか。生活も就職活動の状況もコロナ以前に近い状況に戻った今、地方企業がUIJターン採用を強化するために必要なことは何かを、データから読み解いていきます。

地方企業の採用実態

まずは、現在の地方企業の採用実態を、データから読み解いていきましょう。
地方企業の採用実態を把握するには、都道府県別の有効求人倍率を見ると、求職者側に優位なのか、企業側に優位なのかが見えてきます。

有効求人倍率は地方で高く、高止まり傾向が続く

都道府県別の有効求人倍率(2025年4月)によれば、東京圏・大阪圏と福岡県及び一部の道県では1.05~1.25倍程度なのに対し、北陸や中国地方などは1.5~1.9倍近く、都市圏よりも高い数値が確認できます。

※出典:厚生労働省発表の数値を当事務局でグラフ化
https://www.jil.go.jp/kokunai/statistics/shuyo/0210.html

有効求人倍率は、求職者1人に対して、何件の求人があるかを示す数値です。数値が高いほど1人当たりの求人企業数が多いため、企業の採用が厳しくなることを意味します。
そのため都市圏よりも地方圏のほうが、求職者に有利な売り手市場となっており、採用の難易度が高いことが分かります。
有効求人倍率の推移を確認すると、ここ数年高止まりしていることが分かります。
少子化の影響から、労働人口は今後も減少が続いていくため、売り手市場はこの先も続き、採用難易度はしばらく下がりそうにないと考えられます。

※出典:厚生労働省「一般職業紹介状況」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_37525.html

求人広告出稿は全国的に増加

採用難易度が高い状況の中、企業はどのように対策しているのでしょうか。
公益社団法人 全国求人情報協会発表の「都道府県別の求人広告件数と前年同月比」によれば、ほとんどの都道府県で求人広告出稿を増やしている状況が見えてきます。

※出典:公益社団法人 全国求人情報協会発表の数値から事務局でグラフ化
https://www.zenkyukyo.or.jp/outline/research/

前年から減少に転じているのは、東北4県(青森県、宮城県、秋田県、山形県)と九州3県(佐賀県、長崎県、熊本県)の7県だけで、他の都道府県は増加しています。
全国平均で見ると、求人広告出稿は前年比+16.8%となっており、多くの企業が求人情報を届けることに注力していることが分かります。

都市圏以外は、人口流出も課題

企業は広告出稿を増やして努力していますが、その広告に反応する求職者の状況は、どのようになっているのでしょうか。一般的に地方の若者が都市圏へ流出してしまう懸念が語られていますが、実際の状況をデータで確認してみましょう。

総務省の「住民基本台帳人口移動報告」によれば、2022年と2023年の都道府県別転入超過数は、都市圏のみがプラスで、地方はほぼマイナスとなっています。
東京都の年齢階級別の転入超過数を見ると、20~24歳の新卒世代が著しく多く、次いで25~29歳と若い世代が地方から都市部(特に東京圏)へ流入している状況が見えてきます。

※出典:総務省「住民基本台帳人口移動報告」
https://www.stat.go.jp/data/idou/2023np/jissu/pdf/all.pdf

※出典:総務省「住民基本台帳人口移動報告」
https://www.stat.go.jp/data/idou/2023np/jissu/pdf/all.pdf

求人広告の出稿量が増加しているにもかかわらず、地方では働き手となる若年層が都市部へ流れてしまっている状況が見えてきます。地元エリアでの労働人口が減少しているなか、次に狙うべきは都市部へ流出した若者を地方へ還流させるUIJターン採用となり、地方企業の採用の厳しさが見えてきます。

学生の地元就職意識

一方で、学生の地元就職意識は、どうなのでしょうか。
マイナビの「2025年卒大学生Uターン・地元就職に関する調査」から、学生の地元就職意識のデータを見てみましょう。

地元就職希望者割合は復調

地元就職希望者割合は、21年卒まで減少傾向だったものの、その後増加へ転じます。25年卒では62.3%と、コロナ前となる18年卒の数値(61.3%)を超えるまで、数値を戻しています。

※出典:マイナビ「2025年卒大学生Uターン・地元就職に関する調査」
https://career-research.mynavi.jp/reserch/20240509_75888/

地元企業へ就職するきっかけの85.6%がインターンシップと回答

学生はどのようなきっかけで、地元就職に意識を向けるのでしょうか。
地元就職に対する考え方が変わったきっかけを確認すると、85.6%が「地元企業のインターンシップに参加したこと」と回答しており、インターンシップ参加が地元就職のきっかけとして重要な役割を果たしていることが分かります。

※出典:マイナビ「2025年卒大学生Uターン・地元就職に関する調査」
https://career-research.mynavi.jp/reserch/20240509_75888/

採用者の3割以上がインターンシップなどの参加者

25年卒の就職活動から「採用直結型インターンシップ」が解禁となる変化がありました。どの程度、インターンシップが実際の採用に影響しているのか、データを確認してみましょう。

リクルートの就職みらい研究所が発行している「就職白書2025」によると、25年卒の採用者におけるインターンシップ参加割合は、従業員規模に関係なく3割以上となっており、インターンシップが採用に関して一定の影響を与えていることが見えてきます。

※出典:就職みらい研究所「就職白書2025」
https://shushokumirai.recruit.co.jp/wp-content/uploads/2025/06/hakusho2025_0411_0618.pdf

地方就職におけるインターンシップ参加状況

地方企業のUIJターン採用においても鍵となる「インターンシップ」ですが、地方企業はインターンシップの機会を十分に提供できているのでしょうか。データを紐解いてみましょう。

地元以外からのインターン参加率が課題

マイナビの「2026年卒 大学生 インターンシップ・就職活動準備実態調査」では、地元就職のためのインターンシップ・仕事体験への参加割合を、地元の大学に進学した「地元進学」者と、地方就職の対象者である都市圏など地元以外の大学へ進学した「地元外進学」者で比較しています。
結果は、「地元進学」者の参加割合が41.5%だったのに対し、「地元外進学」者は27.4%と、14.1ポイント低くなっています。地方就職者採用において「インターン」が鍵になっているものの、地方就職の対象者である都市圏などへ進学した「地元外進学」者のインターンシップへの参加状況が伸び悩んでいます。
では、地方就職の対象者である「地元外進学」者のインターンシップ参加率を上げる対策はないのでしょうか。
最後は、その対策について考えてみます。

※出典:マイナビ「2025年卒大学生Uターン・地元就職に関する調査」
https://career-research.mynavi.jp/reserch/20240509_75888/

インターンシップを活用するためのポイント

まずは、これまで解説してきた各種データを振り返ってみましょう。
以下のような状況が見えてきました。

〈地方の採用状況〉

  • 有効求人倍率は地方で高く、高止まり傾向が続く
  • 求人広告出稿は、全国的に前年より増加している
  • 地方では若者が東京圏へ流出し、労働人口が減少している

〈学生の地方就職の状況〉

  • 学生における、地方就職希望者割合は復調している
  • 地元企業へ就職するきっかけは85.6%がインターンシップと回答している
  • さらに企業規模に関係なく、採用者の3割以上がインターンシップなどの参加者である

〈地元就職のきっかけとなるインターンシップの状況〉

  • 都市圏などの「地元外進学」者の地元就職インターン参加率が、「地元進学者」より14.1ポイント低い

【地方企業へのインターンシップ参加率増加へのポイント① ~交通費対策~】

1つ目のポイントは、地方就職を考える学生にとっては、交通費負担が就職活動の障壁になるケースがあるということです。言い換えると、適切な支援があれば、インターンシップ参加者数が増える可能性があります。地元自治体が就職活動に関する交通費支援をしているかを確認してください。
各自治体の就職活動交通費支援の状況はこちらで確認できますので、ぜひ地元自治体の情報を確認して、活用してください。
https://local-syukatsu.mhlw.go.jp/local_search/

【地方企業へのインターンシップ参加率増加へのポイント② ~認知拡大と集客~】

2つ目のポイントは、開催するインターンシップの認知拡大です。
地方企業が、都市圏の学生にインターンシップへのエントリーを案内するには、どのような方法があるのでしょうか。株式会社ディスコの「キャリタス就活 2024 学生モニター調査」のデータを確認してみましょう。
「就職情報サイト」がきっかけで、インターンシップを知ったという学生が約半数を占めています。

※出典:株式会社ディスコ「キャリタス就活 2024 学生モニター調査」
https://www.career-tasu.co.jp/wp/wp-content/uploads/2023/04/internshipchosa_202304.pdf

インターンシップへの参加を案内するには、「就職情報サイト」を活用する必要がありそうです。ただ、一言で「就職情報サイト」と表現しても、さまざまなサイトが存在します。そのため、どのような種類の「就職情報サイト」で、インターンシップ募集ができるのか、簡単に紹介しておきましょう。

就職情報サイトの種類

「就職情報サイト」というと、大手のマイナビ、リクナビなどをイメージする方が多いと思います。ただ、「就職情報サイト」は、それだけではありません。大手のマイナビ、リクナビなどは、掲載社数が多く、掲載費も他社と比較して高額であり、大手企業に埋もれてしまう可能性があります。
大手企業に埋もれないよう工夫するには、どのような「就職情報サイト」を選べばいいのでしょうか。いくつかの切り口をご紹介します。

特徴のある求人メディアで大手と差別化

近年、大手のマイナビ、リクナビだけでなく、特徴を持ったサイトが出てきています。
例えば「Wantedly」は、採用に関して給与などの条件ではなく、企業のミッションや価値観への「共感」でマッチングするサービスで注目を集めており、中小企業も多数インターンシップ情報を掲載しています。
インターンシップに特化した「Infraインターン」では、全国の中小企業をはじめ、1~2年生から有給型のインターンシップを掲載しています。
「インターンシップガイド」でも、全国の中小企業を含めた1~2年生から参加できる、短期・長期のインターンシップを掲載しています。

地方特化型メディア

地方に特化したサイトとしては、地方自治体や新聞社などが運営している求人サイトがあります。多くの自治体で、「就職情報サイト」が運営されていますので、そのエリアへの就職を考えている人にとっては、有用なサイトとなります。
このようなサイトの存在も、口コミで就活生に広まっていますので、UIJターン就職の情報収集のために地方のサイトを活用する方法もあります。

業種・職種特化型メディア

業種や職種に特化した「就職情報サイト」もあります。
希望の業界・職種を目指す人には、ピンポイントで訴求できるメディアとして活用してみるという方法もあります。
例えば「グッピー」は、医療・介護に特化したサイトです。「エンジニアインターン」は、エンジニアに特化しており、「農業ジョブ」は農業に、「Wedding JOB」は、ウェディング業界に特化したサイトとなっています。
上記のような「就職情報サイト」を活用し、社名や事業内容の認知拡大を図るとともに、インターンシップを通じて採用の糸口を作ってみてはいかがでしょうか。