中小企業採用担当者の
リアルなお悩み相談室

インターンシップの募集に苦戦しています。
効果的な手段はありますか?

回答者プロフィール

末吉剛士
株式会社マチトビラ  https://machitobira.org/
代表取締役

1980年鹿児島県生まれ。
大学時代に2回の起業、リクルート勤務を経て鹿児島にUターン。
2011年にマチトビラを設立し、「社長の右腕事業(経営支援)」と「社長の右腕探し事業(採用支援)」の2軸で「変化を楽しめる地域づくり」に取り組んでいる。これまでに200人以上の実践型インターンシップをコーディネート。

インターンシップを実施する上でいつも困っているのが募集です。
希望する学部の学生はおろか、そもそも応募自体が集まりません。
効果的な募集手段はありませんでしょうか?

(岩手県盛岡市/製造業/社員300名程度)

学生を”迎え”にいく姿勢と、社内外や地域のつながりを活用した情報拡散が成功のカギ

インターンシップを実施する企業は年々増えており、募集における競争は激化し続けています。特に知名度の低い地方の中小企業にとっては、厳しい状況が続いていくと思います。プログラムの内容、募集手段などに一層の工夫が必要になってきています。

一方で、無名な中小企業でもインターンシップを活用して優秀な人材と接点を作り、採用にもつなげている企業が存在しているのも事実です。他社と差別化する良いチャンスと捉えて内容・広報ともに見直していただけたらと思います。

何よりまずは、どんな学生に来てほしいかターゲットを絞った上で、プログラム内容を「学生視点」で見直すことをおすすめします。例えば特定学部の学生を狙うのであれば、その学部の研究分野を活かせるプログラム内容や、彼らが関心を持ちそうな社会課題に挑むプログラムなどにアレンジするのもいいでしょう。もし御社が業界内で独自の技術やポジションを有するのであれば、そこを体感できるプログラムもおすすめです。

ターゲットに定めた学生が、普段どんなことを学び、どんなことに関心があり、どんな将来を検討し、どんな不安と期待を持っているのか?どんな機会を求めているのか?そういったことをリサーチした上で、プログラムの見直しを進めると良いと思います。理想としては、実際のターゲットに近い学生にインタビューしたいところですが、アプローチが難しければ、社内の採用成功事例である社員の方が当時どのような学生だったかを紐解き、採用したい学生像を明らかにしていくという手法もあります。

また、中小企業のインターンシップにおける強みのひとつは、経営陣と現場の距離が近いことです。社長や役員と一緒に働く機会は学生にとっても貴重ですし、御社にとっても社長から直接会社のビジョンやミッションを学生に伝える機会をつくりやすく、インターンシップに参加した学生に「この人たちと働きたい。この会社に就職したい」と思ってもらえる接点になりえます。

さて、インターンシップに参加する学生のための環境づくりと内容を準備した上で、本題となる広報について考えていきましょう。結論から言うと、インターンシップの広報で重要なことは、「学生を”迎え”にいくこと」と、「情報を拡散してくれる人や団体とつながること」の二つです。

一つ目の「学生を”迎え”にいくこと」とは、ナビサイトなどで学生が自社を見つけてくれるのを待つのではなく、直接彼らに情報を届けられる機会をつくる、という意味です。そのための具体的なアクションを、二つご紹介します。

1 大学や高校へ出向く”営業活動”
出前授業がよい例です。一度で多くの学生にじっくり話を聞いてもらえます。学校としても、キャリア教育の授業プログラムを組まなければいけない先生が企業を探している場合もあります。自社事業と相性のいい授業がないか、一度コンタクトをとってみるといいでしょう。

2 学生アルバイトの雇用
これはインターンシップ募集や自社の情報を他の学生に流してもらうことに期待した施策です。学生はサークルや部活の先輩の話を参考にすることが多いです。地方から都会へ出た学生が、就活の時に地元の友だちから話を聞くことも多いので、地域を越えて多くの学生にリーチができます。自社内で、学生に任せられるタスクを見つけ、近所の大学などで募集してみましょう。アルバイト期間が終わった学生とやりとりができる関係性を築けたら、その後も継続的に会社のことを他の学生に紹介してもらえるチャンスが増えるはずです。

これら二つの手法は、高確率で学生に情報を届けられる施策ですが、一方で労力もかかります。もう少し手軽に始めたいときにお勧めするのが、二つ目の「情報を拡散してくれる人や団体とつながること」です。

「情報拡散」と聞いて真っ先に思い浮かぶのはSNSの利用かもしれませんが、私は無理に新しくアカウントを開設する必要はないと考えています。ただでさえ大変なインターンシップのプログラム設計に加えて、SNSの運用が重なると、相当のエネルギーが必要です。それらの代わりにやるべきことは、自社のホームページにプログラムの概要と「こんな学生を募集しています」と、来てもらいたい学生のイメージを具体的に書いておくことです。余力があれば中小企業が活用しやすく、拡散されやすい求人サービスに情報を掲載するのも効果的だと思います。

中小企業の場合、人気のある大きな企業と同じ舞台で戦うよりも、社内外の人からの紹介で人材とつながる方が戦略的です。自社の社員や取引先の人、あるいは影響力のある知り合いに、自社のホームページURLと併せて、担当者からのメッセージを添えて情報拡散を依頼する方が、わざわざ新設したSNSアカウントを運用するより効率よく学生と出会えると思います。

人脈の他にも、インターンシップの設計や広報支援をする民間企業、授業プログラムとして学生インターンの受け入れ先を探している大学など、地域の団体や組織を利用しましょう。費用が発生する場合もありますが、プログラム設計にアドバイスをもらうことができ、社内外の人脈ネットワークの外にいる学生にアプローチできます。また、プログラムの内容や期間が制限されることもありますが、地域によっては、県庁や自治体が主宰するインターンシップ推進協議会があり、企業と学生のマッチングを仲介しています。

時代のニーズを踏まえ、まずは学生が求めるプログラムを設計すること。その上で、待つのではなく攻めの姿勢で自分たちから学生に歩み寄り、地域のつながりを通じて情報を広めることができれば、インターンシップの広報はきっとうまくいくでしょう。

 

※文中の写真はイメージです