中小企業採用担当者の
リアルなお悩み相談室
採用活動がオンラインになり、相手の反応が読めず、
相互理解がうまくできません
回答者プロフィール
菊池龍之
michinaru株式会社 https://michinaru.co.jp/
代表取締役
1976年滋賀県生まれ。
同志社大学卒業後、人材総合企業にて採用・教育のコンサルティングに従事。
2011年、株式会社コヨーテを設立。
国内外300社を超える採用事例を研究し、独自の採用メソッド「ペルソナリクルーティング®」を確立。多くの企業の採用変革に携わる。
2020年4月、「変化を起こす挑戦者を創る」をミッションに、事業創造・リーダーシップ開発・採用といった組織課題を解決するmichinaru株式会社を設立。
採用活動がオンラインになって、会社や社員の雰囲気を上手く伝えられていない気がします。
聞いている学生の反応がいまいちで、私たちもオンラインだけでは正直、学生のことをよく理解できていない状態です。
オンラインでもお互いの理解が深まる方法があれば教えてください。
(岩手県盛岡市/医薬品販売/社員250名程度)
オンライン採用での相互理解のポイントは、
コミュニケーションの意図をクリアにすること
2021年4月に行われたIndeed japanの調査によると、中小企業の60%以上がオンライン採用を取り入れているとのレポートがありました。
コロナウイルスの感染状況は少しずつ収束に向かっていますが、利便性の高いオンライン採用は、引き続き利用する企業も多いかと思います。
一方、課題になるのが質問者さんのように、学生の反応が読めない、手応えがないといった相互理解への不安です。
動機形成ができないまま内定を辞退されてしまった、と嘆く企業も多いのではないでしょうか。
オンライン採用で相互理解を深めるためには一体どうすれば良いのでしょうか。
まず、オンライン採用がうまくいかない企業の共通点は、リアルでやっていたことをそのままオンラインに置き換えていることです。
説明会のコンテンツ、面接のやり方、全てリアルの時と変わりません。
オンラインの特徴を理解しないまま、これまでの採用を焼き直しているだけでは成果はあがりません。オンライン採用の相互理解に大切なのは、オンラインのデメリットを最小化して、メリットを最大化することです。
では、オンライン採用のデメリットとは何か。それは非言語情報が把握しづらいことです。
非言語情報とは雰囲気や表情、声のトーンなどのことを言います。「なんだ、それぐらいか」と思う方もいるかもしれませんが、メラビアンの法則によると第一印象の93%がこの非言語情報によって判断されていると言われています。
そのため、これまでリアルでの採用時に伝わっていた非言語情報の多くは、オンラインという限られた視界の中で届きづらくなっています。学生に魅力が伝わっているのか判断しづらい、学生の意図が読みにくい、というのも普段から私たちが、非言語情報を頼りに理解をしている証拠でもあります。
こうしたオンライン採用のデメリットを最小化するために何を見直すべきか。
それは「伝えること」と「確認すること」をより一層クリアにすることです。この説明会で伝えたいことは何か、この面接で確認したいことは何か、意図を十分に練る必要があります。
例えば「会社の雰囲気を伝える」ではなく、「会社の明るい雰囲気を伝える」といった意図を明確にし、その明るさが伝わる伝え方を選ぶ必要があります。
また面接等で学生を見抜く際も、非言語情報が乏しいため学生の真の魅力を見落としてしまう可能性があります。面接であれば、質問に対してどんな回答が返ってくる学生を良しとするのか、逆にどんな回答をする学生は自社には合わないのか。事前に面接官同士ですり合わせておきましょう。
面接時の評価においても「意欲が高そうで、元気だった」よりも、「困難に対して諦めずに取り組むエピソードがあった」と、発せられた言葉から判断できるようになるのがベストです。
オンライン採用のデメリットを最小化するためには、採用活動のコミュニケーションの意図をクリアにすることです。
一方、オンライン採用のメリットとは、移動コストがなくなることで、どこからでも採用に参加してもらえることです。
また、社員にも採用活動に加わってもらいやすくなりました。これは地方企業にとっては大きなメリットで、首都圏の学生が説明会に参加するということも、オンラインであれば可能性が高まります。
採用活動に社員を巻き込み総力戦で臨みたい中小企業にとっては、適した環境とも言えます。
このメリットを最大化するために、選考中の社員との話し合いの機会を増やしたり、なかなか行けない現場の様子を伝えられると効果的です。
ある企業さんでは、リアルでやると非効率な社員と学生の1対1の面談を積極的に導入して、「他の学生に気を使うことなく色んな話が聞けた」と学生から評価された企業もあります。
もちろん、「オンラインだけですべての選考を終えるのはリスクが大きい」と感じる企業も多いと思います。
そうした会社は回数の減ったリアルとの接点を、リアルだからこそ味わえる内容にしてください。
オンラインでは感じられなかった「雰囲気」を存分に伝える機会として、オフィスツアーや社員とランチを一緒にとる、などの企画を実施している企業もあります。
改めてオンライン採用で相互理解を実現するためには、コミュニケーションの意図をこれまで以上にクリアにすること。
自分たちが伝えたいことは何なのか、確認したいことは何かを、十分に話し合いひとつでも実行に移してみてください。
※文中の写真はイメージです